怪我の巧妙

いつもの渚ならそれでも隼人に反抗しただろう。

しかし渚は反抗する気になれなかった。

それどころか、今まで押さえ込んでいた、隼人に対する「好き」以上の感情が溢れだしてきて、胸がドキドキしてしまった。

しかも隼人の診察中に。

こんな動悸がしてるなんて知れたら何を言われるか分からない、

渚はそう思い、一生懸命に気を鎮めようとしたが、意識すればする程胸は高鳴るのだった。

隼人の聴診器も異常な心臓の鼓動をキャッチして、診察が終わると、聴診器をしまいながら渚に話しかけた。  

「別に大した異常はなかった。ただやけに心臓の方が安静にしてるのに、鼓動が早かったな。緊張でもしてるのか?」

隼人は渚の顔を覗き込んだ。

まさか正直に理由も言えるはずもなく黙っていた渚だったが、色々共有した仲だったからか、それとも隼人の勘が鋭かったからか、本当の理由を悟られてしまった。