怪我の巧妙

「正直のところ、かなりきついだろうな。それほどお前のけがはひどいものだ。でもお前がそれをちゃんと受け入れて、自分の身体を治すことを一番に考えて治療に専念すれば不可能ではないかもしれないな。要するにお前次第なんじゃないかな」

隼人はそう言い残すと病室を去った。

一人になった渚は考えていた。

バレーのことももちろん考えていた。

プレイができないかもしれないなんて考えられないことだった。

バレーはいわば渚の生き甲斐だったのにそれが失われるかもしれなかった。

なのに何でか涙は出なかった。

希望が残ってたと言うのも理由の1つだったのだろうが、何よりも隼人に抱きしめられたことで頭が混乱していた、と言うのが一番の理由だった。

渚が隼人のことを好きなのは確かである。

しかし彼からすれば渚はほんの子供である。

彼が抱きしめてくれた理由。

そんなことを考えながら渚は静かに眠りについた。