怪我の巧妙

「渚、少しは落ち着いたか?深呼吸してみろ。吸って吐いて。吸って吐いて。…よし、もう大丈夫だ。気は晴れたか?」  

「…バレー、どうなった?」  

「準決勝はあのまま勝ったらしい。でも決勝は…

」隼人は渚の気持ちを思うと最後まで言えなかった。

隼人が恐る恐る渚の顔を除くと、思っていた程ショックでもなかったように、ボーっと天井を眺めていた。  

「…ショックじゃないのか?俺はてっきりお前は泣くかなって思ってたけど」  

「泣いてほしい?今、がんばって涙を押さえてるから…あれ、あれ?涙が勝手に出てくる…。とまんないし…。おかしいね…」

渚はそういって一生懸命涙を拭こうとした。

しかし、骨折のせいで上手く両手を使えなかったのか、涙は横にこぼれていった。

隼人はそんな渚を見てとても切なくなり、急に、しかし優しく渚を抱きしめた。

これには渚も驚いて涙もすぐに止まってしまった。