怪我の巧妙

「間違いなんかじゃないですよ。ホントにひどい骨折をしたものです。痛みがないのは痛み止めを打ってるからですよ。じゃなければ痛みで叫んでしまいますよ、これだけ骨折していればね。…あっと時間ですね。悪いですけど、私はそろそろ時間なんですよ、ちょっと行かないといけないので。隼人に変わりましょう。分からないことは隼人に聞いてみて下さい…隼人!」

信吾はそう言うと隼人が入ってくるのと入れ替りで出ていった。

隼人は渚に少しずつ近付いて声をかけた。  

「ショックだったか?」

隼人は渚のベットの近くにあった椅子に腰掛けた。  

「…先生、骨折って本当?全然信じられないよ。私、昔からドジで、よくこけたりする子だったんだよ。階段から落ちたことも何回かあるし。でもそんなことしてきたのに骨折なんて一回もなかった。一回も…」

渚の声は話すに連れて涙声に変わっていった。

隼人はそんな渚を静かに見守っていた。

次に渚が話すまで2人は一言も話さなかった。