怪我の巧妙

「先生、治療するんでしょ?早くして下さい。早く試合に戻りたいんです」

渚は隼人が入ってくるとすぐに言った。  

「まあ落ち着けよ。試合はこっちが有利に進めてたんだろ?そんな簡単に負けはしないさ。ほら、座ってけがを見せてみろ。…あーかなり腫れてるな。これ痛いか?診たところ、ただの突き指みたいだけど…」

隼人はそう言って渚の手にこぼれ落ちる涙に気付いた。  

「悪い。痛かったか?」  

「あ。ごめんなさい。違います。痛くて泣いてるんじゃなくて…」

渚はそう言うと思いきり泣き出し、隼人にしがみついた。

隼人は黙って渚を抱きしめた。

10分程泣いてただろうか。

渚はやっと隼人から離れて、  

「すみませんでした。泣いてなんかスッキリしました。そろそろさっきの試合が終わるころかな。テーピングか何かしてもらえます?」