怪我の巧妙

「…もう大丈夫だってば。…って聞こえてないな、これは」

渚はそうつぶやくと隼人の指示に従った。  

「聞こえてるさ。少し黙ってろ。安心できないからこうしてるんだ」

隼人はそう言うと聴診器をゆっくり渚の身体に当てた。

隼人の手が渚の身体をゆっくり滑っていく。  

「よし、じゃあ俺の言う通りに呼吸しろよ。…ゆっくり吸ってー吸ってー吸ってー…止めて!…次はゆっくり吐いてー吐いてー吐いてー…止めて!」

隼人はこの呼吸法を何度も何度も渚にさせた。

30回はしただろうか。

隼人はやっと聴診器を外し、触診、そして打診へと移っていった。

隼人の診察が終わるころ、病室に信吾が入ってきた。

隼人はそれに気付き、他の診察を前の診察より少し早めに切り上げた。