怪我の巧妙

隼人が部屋を出ようとすると、

「あ、先生、一つ気になることがあるんだけど…」

渚は少しいぶかった表情で隼人を見つめる。

「何だ?」

「私の主治医ってことはずっと病院にいるんでしょ?学校の保健室はいいの?」

「なんだ、そんなことか。てっきり入院についてまだ納得してないことがあるのかと思った。いいんだよ。学校の方は俺の後輩に頼んだ。大抵保健室に来るのは、軽傷のやつばっかりだから。重傷者がいればここに運ばれてくるし。そんなお前も含めた重傷者を今後も学校で診ていくのは俺だからな。最初の診察はできなくても、治療に携わって、今後のケアに当たる方が必要だと思うから」

隼人は笑顔で答えた。

渚は納得した表情で、

「そうなんだ。てっきり私に気があって、私を優先してくれたのかと思っちゃった」

といたずらたっぷりに隼人に言葉を投げた。

「あのな…」

そう言いかけた隼人をよそに、

「じゃあ私、もう少し寝るね。おやすみ~」

と布団をかぶった渚は、部屋から出ていく隼人を見送る間もなく、深い眠りに落ちていった。

隼人の気持ちに気づくこともなく…。