怪我の巧妙

 「まあまあ。隼人も少し落ち着きなさい。早見渚さんですね。自己紹介が遅れましたが、私、成美信吾といいまして、成美隼人の父です。この病院の院長ですよ」

と隼人と渚の2人の間に入った成美信吾。  

「私、そんなに悪いんですか?死んじゃうの?」

信吾は笑って、  

「まさか。人間そんなに簡単には死にませんよ。あなたは他の健康な人よりも疲れが激しいだけです。隼人から事情は聞いています。ゆっくり休めばすぐに良くなりますよ。しかしさっきのように無理して走ったりして、身体を痛めつければ入院は長引き、死への可能性も出てきますよ。では私はこれで。隼人、彼女の様子が落ち着いたら私の部屋に来なさい」

そう言うと信吾は静かに部屋から出ていった。

渚は逃げようと必死で隼人と戦っていたが、急に力が抜けたかのようにベッドに戻った。

隼人も渚を押さえ付けていた手を離し、息をついた。  

「やっとわかったか。ゆっくり休んで新学期から部活にも徐々に入っていけばいいから。これ以上身体を傷つけちゃいけない」