怪我の巧妙

「昨日、俺、親父にお前のことを相談したんだ。発熱に脈拍微弱、怪我もなかなか治らない。その上拒食の気があるってことをな。そしたら何でもっと早く入院させなかったんだって怒られたぜ。分かるだろ?お前の身体はもう休ませないと保たないんだよ」

隼人はゆっくり渚の方を向き直った。

渚はびっくりしたようだったが、それでも練習に行くと断固言い張った。  

「そんなこと、私のこと診てない先生のお父さんに何で分かるんですか?ホントに、私、大丈夫ですって」  

「俺だって入院なんて大げさだって思った。でも親父の説明聞いてたら、大げさじゃないって思った。このままだったら本当に命も危なくなる。お前、この前、肺に穴があいた時、泣いただろ?今はそれより危ない状態なんだ」

渚は震えていた。

頭では大丈夫だという自信があるのに、身体は隼人の言うことに納得していたのだ。

それでも渚は何も言わずに保健室から飛び出していった。

隼人は追いかけてとどまらせようとしたが、そこで待っていた。