怪我の巧妙

「その通りだ。その状態じゃ普通の生活もかなりきついはずだ。それをましてやバレーボールなんかできるわけない。それに…ちゃんと食べてるのか?」

突然の意表をついた質問に、渚は慌てて事実を隠そうとする。  

「いやだな、先生、何言ってるんですか?食べずにバレーみたいなハードスポーツやる人なんていませんよ」  

「お前もか?」

隼人の言葉に渚は戸惑ったが、やがて話し始めた。  

「…何で分かったんですか?」  

「お前のやせ方があまりに急激だったからな」  

「先生は何でもお見通しですか?へへっ!そうです。私、最近食べてないんです。と言うより食べられないんです。食事を見るとなんか気持ち悪くなっちゃって。ちょうど入学式の日ぐらいからかな、受け付けないと感じ始めたのは。親は気付いていません、このことは。ただ食欲がないぐらいにしか見てないと思います。もう少し言えば、親は私が食べなくなって喜んでるんじゃないでしょうか。中学の時って私太ってたからな。…あれ?何でだろ、涙が出てくるよ…」

隼人は渚の言葉に耳を傾けていただけだったが、”涙”の言葉を聞いて渚の方を向いた。

そこには隼人が知ってる渚は、強い渚はいなかった。

隼人は涙にぬれた渚にやっとの思いで質問を返した。