怪我の巧妙

 「…ん…あれ、成美先生…?」

渚はそう言いながら起き上がる。

「…あ、そうか、私、また倒れたのか。先生ごめんなさい。また迷惑かけちゃった。じゃあ戻りますね」

渚は何事もなかったかのようにまた練習に戻ろうとしたが、

「待てよ。だめだ」

という隼人の制止が飛んできた。

決して強くはないが、反論を許さない言い方である。

その制止の意味がわからないという表情の渚は、ただ立ち尽くしていた。

隼人に勧められるまま、椅子に座り、隼人を懸命に見つめる。

「お前、今の自分の状態、分かってるのか?正直スポーツなんてできる状態じゃないぞ」

隼人は渚に分からそうと、どうにか自分の気持ちを抑えながら冷静に話しだした。

「お前が目覚める前、ちょっと診察させてもらった。発熱してるし、脈の拍動も弱い。脈拍が弱いってどういうことかわかるよな?」

「…心臓が弱ってる…?」

渚は答えながら、無意識のうちに胸に手を当てる。