怪我の巧妙

「そういや、お前のあの滑り込み、すごかったよな」と徹。  

「そうそう、私もびっくりした。高校に入ってまた上手くなったね、渚。でもいい加減に少しはおしとやかにしないと、徹に嫌われるわよっ!」

そう言ったりんは笑った。渚も徹も笑った。

が、しかし。  

「もう!何言ってんの?でも言えてるかもね、ははは!っつ!なんだ?」と渚。

「どうしたの?どこかけがでもした?」

心配そうに覗き込む2人に渚は笑顔で、  

「あ、ううん、なんでもない。ごめん、私、ちょっとトイレに行ってくるね」

渚はそう言って離れたが、実は笑った拍子に、ひざでぶつけた胸がひどく痛んだのだった。

実際にトイレに入って自分で診てみたが、何も異常はなかった。

笑うことをしなければ痛くはないだろうと判断して2人のもとへ戻り、午後からの試合を再開した。

試合中、アタックが決まって喜んだり、サーブの集中の時に深呼吸すると胸はズキっとしたが、

渚はかまわずプレイを続けた。

結果はあまりいいものではなかった。