「え?」
「待って、凛くん。聞いてほしいことがあるの。」
凛くんはもといた場所に戻って座ってくれた。
「なに?」
「あのね…あの…」
言いたいことがまとまらない。
言葉が詰まって出てこない。
どうしよ。
凛くん待ってるのに。
「いいよ、ゆっくりで。杏の言いたいことちゃんと聞くから。」
どき
凛くんはきいてくれる。大丈夫。
「その”杏”って呼び方、咲だけだったの。」
「え?」
「咲は私の恋人だった人。」
「だった…?」
凛くんの目が見開かれた。
「…うん。咲も同じ高校に入学するはずだったの。でも、いろいろあって今は一緒にはいない。」
「…。」
言えなかった。
咲が事故で死んだことを口にしてしまうと余計に咲の死を実感してしまう。
それが今でも怖くて。
「一緒にいれると思ってたんだよね…。だから余計に今が受け入れられなくて全然忘れられないの。」
私の乾いた笑い声が部屋の中に響く。
「そんな簡単に忘れられることじゃないだろ。」
凛くんは同情するわけでもなく、そう強く言ってくれた。
私はそれがすごくうれしかった。
そう。忘れられることじゃない。
忘れたくない。

