愛する人へ今


「ここならあまり雨があたらない…。」


私がかろうじて歩けたのはほんの数メートル。
大きな木を見つけてそこに腰をおろして、助けが来るのを待った。



誰かが気付いてくれるはず。

そう信じて。


雨にぬれて寒いはずなのに体はどんどん熱くなる。
頭もがんがんする。



「咲…。」



ひとりになると急に恐怖が襲う。
咲が亡くなった時と同じ恐怖が。



マタ ヒトリニナッタラ ドウシヨウ。



そう考えたら震えが止まらなかった。

大丈夫、みんながいる。
きっと見つけてくれる。


そう言い聞かせても震えは止まってくれない。



「いやだ…、ひとりにしないで…。」




ううん、大丈夫。
きっと咲が見つけてくれる。


だって咲は私のヒーローだもん。



お願い、咲。



助けて。





そこで私の意識は途切れた。