愛する人へ今



そういえば、咲と一緒に海に行ったこともあったっけ。



運動に関しては全く能力のない私。
対して運動神経抜群の咲。



泳げるようにしてやるから、って連れてこられた海で大雨にあいふたりとも風邪ひいたっけな。
なんのために海まで行ったのだか分からない。


でも。
咲と行った場所はどこだって最高の思い出の場所だ。




忘れる事なんてできない。




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―――



「…なんで海じゃないんだよー!」


目的地について早々蓮が大声を出す。


それもそのはず。
海の見える綺麗な場所を通り越し、今私達がいるのは山の中。




「げ、電波入らない。」


「うそーっ!?」




…そう、それも電波の届かないほどの。



毎年行き先は学年ごとの先生が決める。
私達の学年の先生は運悪く、ちょっと頭の固い先生ばかりだった。


『海なんて華やかな場所ではなく、自然にもっと触れるべきだ。』



というなんともそれらしい理由で、私達3年生の行き先は山の中になったのだ。