「ああ、まぁ知り合いってほどでもねぇけど。ついさっき自販の前で会った。」


「……カフェオレのボタン押した人…。」


私だけ知らないのがムカついたから仕返ししてやった。



ぼそっと呟いただけだけど藍には十分聞こえてるはず。


「あー、なるほどね。杏寿に10円くれた人か。」


「アンジュ?」

「その子の名前よ。秋田杏寿っていうの。」



「ふーん…」


…あ、あれ?

藍の反応が予想外だった。
怒ると思ってたのに全然そんなことない。

私の時は怒ったのに。



「お前杏寿っていうのか。珍しい名前だな。」


「ど、どうも…。」


「俺、山根凜(やまねりん)。名字で呼ばれるの嫌いだから名前で呼べよ。」