「 あの。 」
招かれた方に足を進めると
廉くんはペタンと腰を下ろして
何も言わずに
座りなよ、と
コンクリートの床を人差し指でトントンと叩いた。
「 変なの見せて悪かったな。 」
気まずそうに笑う彼。
笑うことなんて
今の彼には不可能なのに、
私を気遣ってなのか
無理やり頬を上げる。
そんな、無理されると
私だって困るよ。
「 笑わなくていいのに。 」
そう言うと
廉くんは驚いたように
目を丸くさせた。
「 つらいんでしょ?なら笑う必要ないじゃない。 」
限りなく初対面に近いのに
私は何を言ってるんだろう?
でも、苦しそうに笑う笑顔なんてキライ。
「 萩野さんって結構強いね。 」
さっきの笑顔が、
消えた瞬間だった。
口をきゅっと結んで
今度は悔しそうな顔。
そして
彼はこう言う。
「 俺の話、聞いてくれない? 」

