そして目が合う。
屋上にいるもう一人の生徒と。


春先輩のように切なそうに笑う笑顔。



一之瀬廉(いちのせれん)

同じクラスの男の子。
綺麗に真っ黒の染まる真っ直ぐな髪の毛。
身長は180センチくらいありそうで、
性格はチャラくて遅刻なんて日常茶飯事。
それでも成績優秀、スポーツ万能。
女の子にモテモテな彼。



そんな彼と私は
全くもって接点がない。
同じクラスだけど
人気者の彼とは一度も会話したことがない。



こんなところで、
こんなタイミングで
廉くんと対面するなんて想像もしていなかった。
帰れるものなら今すぐ帰りたい。


けれども廉くんは
そんな私にはお構いなし。


" こっちにおいで " と
まるで小さな子供でも呼ぶみたいに
優しく手を招いていた。


いつも見る
明るい太陽みたいな笑顔は
今の彼にはどこにもなくて。
さっきの出来事が雲となって
輝く太陽を隠しているみたい。



そんな彼を見ていると
じっとしているわけにもいかなくて、
一人にさせたらいけないような気がしたの。