どうして廉くんと契約を結ばないといけないの?
そもそも契約の内容は何?
「 む、無理だよ 」
ふいに彼を突き放してしまった。
でも彼の大きな体は
私の小さな力じゃ全然かなわなくて
思いっきり押したはずなのに
彼は少しよろけたくらいだった。
そしてまた一歩ずつ私に近づくの。
それに比例して私も後ずさり。
無駄な抵抗だったのかもしれない。
「 悪いようにはしないから。 」
予告もなく突然掴まれた右手。
一気に彼の胸に引き寄せられて
一気に近づく顔と顔。
その間はわずか3センチほど。
そして容赦もなく
重なった唇。
それは契約の証。
甘ったるい香り。
私の顔にやさしく触れる彼の柔らかい髪。
全てを一之瀬廉という
一匹の小悪魔に吸い取られそうになった。
「 契約、完了。 」

