孤独と嘘と愛に騙されて。


「 ごめん、どういうこと? 」


いくら考えても答えなど出てこなくて
彼の回答を待つことにした。
すると廉くんは一切表情を変えず、
何かに吸い寄せられたようにすっと私の耳元に顔を寄せた。

何かの漫画で見たことあるようなそんな情景。
高身長の男の子が
腰を曲げて女の子の耳元でボソッと何かを呟くの。
そして今、
同じような場面が描かれている。


「 香恋のこと気に入ったから。 」


私が想像していた場面と全く同じ。
少し低くなった彼の声は
今までに聞いたことのないくらい落ち着いた声だった。
さっきまで "萩野さん"と呼んでいたのに
突然変わった呼び名。
それに、廉くんの回答を聞いても
それが答えになっているのかさえ分からない。


「 契約、しよっか ? 」


彼の顔は私の耳元にあって
表情なんか見えないはずなのに
彼の表情が見えた気がした。
いたずらを仕掛ける小さな子供。
ううん、小悪魔のよう。


「 契約?意味、分かんないよっ 」


2人きりの屋上で
明るかった太陽の光は西に沈み
だんだんオレンジ色に変わっていく。

契約?何それ?どういうこと?
状況把握ができない自分。
焦る自分。
いろんな自分が混ざってしまって
落ち着いてなんかいられないの。