私があんなことを言わなければ、ライはあんなに悲しまなくてすんだのに……。
私の軽率な言葉のせいで、ライを悲しませてしまうなんて……。



ライはにこにこしながら未来の前を歩く。
未来はそんなライが嬉しくて、なるべく遠くに行けるように早めに歩いた。



私の行動すら、ライを不安にさせてしまうのに……。



ライは急に未来が歩くのを早くしたから、心配そうにちらちら未来を気にかけながら歩いている。

「ライ見て!
春の花が沢山咲いてる!」

未来は思わずライのリードを放して花に夢中になってしまったが、ライはその間ずっとおすわりをして待っていた。
すると、綺麗な蝶がまるでライに遊ぼうと言っているみたいに、ライの周りを飛び回る。
ライは蝶を追いかけ草むらを走り回っているが、昨日雨が降っていたということもあり、ところどころに水溜まりができていた。

未来はライがいないことに気付き辺りを見渡すと、ライが蝶を追いかけて走り回り、毛が汚れているのに気付いた。
未来が、

「ライ、帰って来て!
汚れたら游さんに怒られちゃうから!!」

と慌てて止めるがライは蝶を追いかけるのに夢中で、未来の声に気付かない。

ライが未来の声に気付かないぐらい何かに夢中になれるのは、未来にとってすごく嬉しいことなのに、未来の脳裏には{游}しか映ってなくて、ただただそれだけに支配されていた。

「ライ!!」

未来は仕方なくライを追いかけたが、少し経つと苦しくなり座りこんだ。

……恐れていた事態が起きた。

ライもさすがに疲れて未来の方を向くと、未来がすごく苦しそうにしているのに気付いた。
疲れていても大好きな未来のために全速力で走るライの目には苦しむ未来しか映っていなかった。