全部全部話した。

話してる途中、声がどんどん大きくなっていって周りの人に見られてたけど。

「…」

紀伊は全部黙って聞いてくれていた。
真剣に。
そして、聞き終わると静かに口を開いた。

「でも…さ、それって未来次第でしょ?」

「え?」

「例えばー…ね?んー…」
少し考えるようにして紀伊はすぐに思い付いたように話し始めた。

「優は浮気するよ。三日に一回ぐらい」

いきなりのカミングアウトに私は目を見開く。

「女からの悪口とか、嫌がらせとかしょっちゅうだし、殴り殺したくなるときもある」

恐ろしいことをさらりと言った紀伊は「つまり…」と私の目をまっすぐに見た。
「そんなやつに惚れたんだから、しょうがないってことっ!要は気持ちが重要なのよ」

「紀伊がいいことゆった。明日は台風…」

「こないから」

「でも…」

「でも?」

「私…無理だよ。空斗のこと」

約束は約束だもん。

それに、お母さんに言われたことを空斗に言ったら、きっと、お母さんのことを嫌いになっちゃう。

そんなの絶対ダメ。

自分のたった一人の家族を嫌いになるなんて。

私とお父さんも、空斗と家族だけど、やっぱり空斗にとっての家族は、母親なんだもの。

私も片親だったから…分かるの。