遠い懐かしい記憶ー…。俺がまだ五歳だった頃のこと…。

“今日からあなたのお姉ちゃんになる子よ”

そういって連れて来られた女の子は小さく微笑む。

でも俺は…
照れて少しうつむく女の子に…
胸をドキドキさせていた…ー。

「空斗(そらと)!お弁当!」

「はいはい」

そういって俺は姉の未来(みく)から弁当を受けとる。

あれから11年、俺たちは“姉弟”として暮らしてきた。

「あっお礼はっ」

受け取った弁当をかばんにしまっている俺に、未来はため息混じりで言う。

「見返り求める女はモテないぞ。」

「んなっ」と叫ぶ未来の声に反応して、さっきまでテレビを観ていた母さんと父さんがふりむきクスクスと笑う。

「仲良いのね」と母さんがいうと『良くないっ』と見事にはもる。

ちなみに俺は母さんの連れ子、未来は父さんの連れ子だ。

「これからもよろしくね」

ふふっと笑う母さんは温かくて…。

でもごめん母さん。

それ…無理みたいだ…。

…俺は未来が好きだから…ー。


教室に入り時計確認。

“7時30分“

「はぁ~ギリギリせーふ」
といいながら席に座るのが日課になっている。

「いいよなぁ~」

「は?」

なぜか俺のイスに座ってため息をつく親友の春日井優。

…優は女には平等に優しい。女にはっ(ここ重要(笑))

「なにいってんだこいつは」という感情が顔にでていたのか、優は「やれやれ」といって俺の後ろの奴の席に座る。

「立花未来お前の姉ちゃん」

「…未来ぅ」

親友の口から未来の名前がいきなりでてきてつい間の抜けた声が出た。

「顔いいし、胸でかいし、セック…」

「黙れ」
優の口からは基本下ネタしか出てこないから十分警戒が必要で。

「お前はいいよなぁ~席も隣で家も同じで。風呂も一緒でベッドも…」

おい。待て。と殴りたいけど今は我慢。

…そんなことより後半は一緒じゃないから。

「あいつバカだし短足ちびだし、色気ねぇよ?」

ガヤガヤと騒がしい教室の中、俺は声を潜めていう。

「ふーん」

なにかを感じ取ったのか優はにやりと笑ってこっちをみる。

…ゾクッとしたのはきのせいか?

頭に「?」を乗っけたままHR開始。

「えー、来週期末あるから勉強するように。」

もともと口数の少ない田中(担任)は「それじゃ」といって一時間目を始める。

テスト…か。

(まぁ未来はダメだろうな…)

とか思いつつ視線は隣の未来に向いてるんだ。

予想通り青い顔した未来が必死になにかをメモしている。

それを見てふっと笑う俺はやばいかも…。

…とこのときは気付いてなかった。

…優がそれをニヤニヤしながら見ていたことに…