~空斗~

やってしまったー…。

「キスして」

なんて未来が言うから、俺の理性は完全にぶっ飛んだ。

気づいたら未来は涙を浮かべながら息を整えていた。
あー…

俺のバカ。

「…と空斗っ家の前っ!ついたよ」

俺は顔をあげる。

そこはたしかに俺の家。

…やばい…

帰ってきた道全然覚えてねぇ…。

「あっ…あのさっ…」

「ん」

と未来はチャイムを鳴らそうとする手を止めて俺の方を見る。

「今日は…ごめんな…」

せっかくの誕生日で、初デートだったのに…

“一生”の思い出っていってたのに…。

「いきなり…変なキスしたりして…いやがってたのわかってたのに…」

ぎゅっと拳を強く握る俺の手を未来はそっと自分の手で包み込んでふっと微笑む。

「あのね、別にいやじゃないよ。ただびっくりしただけ」

未来は最低なことした俺を笑って許してくれた。

「キス…してい」

未来にキスしたい。

未来に触れたい。

心からそう思った。

未来は少し顔を赤らめてから俺に抱きついてきた。

ー…これがいけなかったんだ。

パサッと袋の落ちる音がする。

悪い予感がしたー…。

「何」

と未来は後ろを振り向いて固まる。

一言つぶやいて。

「お母…さん…」