【春が運ぶ君】


ぽかぽかと暖かい図書室。春の光が大きな窓から入り込み陽だまりを作っている。

僕は本を返却し、次に借りる本を探していた。

そんなとき、

「あっ!槙君だ」

バスケ部のマネージャーを務める篠塚 めぐるさんに声をかけられた。


「ああ、篠塚さんこんにちは」


「こんにちは!あはは、ちゃんと挨拶するの槙君らしいね!」


なんだか元気な人だ。


「そうですか?えっと、篠塚さんも本を借りに?」


「うん!それでさ、槙君その作者好きなの?」


「え、あ、はい。最近知って…」


「そーなんだー!私もその人好きでさ~でも結構マイナーな人でしょ?だから、なかなか意見を共有できる人がいなくてねー」


聞くところによると、その作者の本を借りようとしたところ人影が見えてそれが僕だったらしい。


「ごめんねー、貴重な同志だと思ったらテンションあがっちゃって…」


あははと彼女は自嘲気味に笑って迷惑だったらごめんねとつぶやいた。


「いえ全然、迷惑じゃなかったですよ。むしろ、話が合う人がいてうれしいくらいです」



「あっは、槙君それ殺し文句」


そう彼女は冗談めかして笑う。



細められるアーモンド形の目、きゅっと頬にあらわれる小さなえくぼ、少し下がった眉…


僕はそんな笑顔に心地よさを感じた。



まるで、春の優しい光が作る陽だまりのように…



その全てに吸い込まれた。