好きって気づいたら。

*康二*

東京観光すると言ったが、どこへ行けばわからない。

気づけば、本屋の前にいた。
店の前で立ち読みしていると。

((ボトボト))
上から変な音がした。

「私服濡れちゃう。」
そういって、赤い傘をさした女性は、俺の隣に並んだ。
これが、相合傘。
なんて思いながら、隣を見た。
俺と同い年ぐらいか?
でも、大人な顔立ちをしている。
そう思っていると、向こうもこっちを見た。

((目が合った///))
「この辺では見ない顔。
どこから来たの?」

ぇっ?いきなりナンパ?
ナンパなら無視してた方がいい
そう思っていたが、口元がゆるんだ。


「大阪から来た。」

そう伝えた。

「雨嫌だね。
大阪も雨だったからつまらないでしょ?
本を読むタイプじゃないのに、何故か、ここに来ちゃったのよね。」

そういって、お店の中から黒の傘を俺に渡してきた。

「はぃ。
傘、ここ無料で貸出してくれんの。」

「あっ、ありがとう。」

((ニコッ))
っと微笑み彼女は、居なくなってしまった。
と、同時に落ちた生徒手帳。

追いかけようと思ったが、さすが東京。
どこに行ったかわからなくなってしまった。

ただ、彼女の笑顔は消えずに、まぶたの奥に残っていた。