外は少し暗くなってきていて、気温もだいぶ下がっていた。


吐く息が白くて、ちらほらと点きだした電灯がさらに空気の冷たさを強調させるような気がした。



「寒いねー……」


「そうだねぇ……すっかり冬だよね」



私は口の前に手を合わせ、はーっと息を吐きかける。


これ、あったかいのは一瞬で、すぐにまた冷たくなると分かっているのだけど、やりたくなると思う。


やらずにはいられない、というか。


ふと見やると秀真は学ランに両手を突っ込んでいた。


首に巻いたマフラーに顔を埋めて、いつもより少し猫背。


私は少し厚めのカーディガンを着ているだけで、今日はマフラーを忘れてしまった。


首周りが寒くて、体を小さくちぢこめる。



「歌さん、ほら」


「え?」



ん、と目の前に差し出された手の平の意図がつかめず、私は秀真を見上げた。


そんな私に秀真は首を傾げる。



「寒いでしょ? だから、手。繋ご?」


「……いや、私手冷たい」



私は基本は子供体温なのに、指先だけはいつも冷たい。


子供の頃からずっとそうで、多分そういう体質なのだと思う。


それで、まあ、そんな私と繋げば秀真から体温を奪うようなものだよね。


それは、悪いと思う。



「いいよ、僕気にしないから。ね?」


「……うん、ありがと」


「いーえ!」



差し出された手に触れると秀真は嬉しそうに私の手を取った。


秀真の手は大きくて、私の手なんか簡単に包み込まれてしまう。



「秀真の手あったかい……」


「ん、どーも」



秀真は微笑んで、私の手をきゅっと握った。





秀真の体温が私の中に溶けて、


私の掌にじんわりと広がっていく感覚が、


ひどく気持ちよくて、


ずっとこのままでいられたら、と思ったんだ。