それで、そういう秀真を見るたびに、なんともいえない感情が自分の中に渦巻くことに、私は気づいていた。


どう形容したらいいのか。だけど、もやもやとする。


最初は寂しさかと思った。


例えば秀真に彼女が出来れば、彼女優先になるだろうし、今までのように四六時中一緒というわけにも行かないから。


そもそも交友関係だって少しずつ違ってきている。

男女という性別の差は少しずつ顔を覗かせている。


遅かれ早かれ、そういう分かれ目は来るかもしれない。


秀真を想う女の子は数多いるから、幼馴染というだけで傍に居続けるのは無理かな、と。



それが寂しいのだろう、と。



確かにそれも間違いではないと思う。


ただ、少し違う気がした。


でもやはり、何が違って何が答えなのか、分からない。



得体の知れないものが胸の奥に居座っているこの感覚が、私は好きじゃない。


いかんせん気持ち悪いのだ。


吐き出して楽になりたいのに、どうすれば吐き出せるのかも分からない。


もやもやとしたそれが痛みとなって全身を刺すような、指先が冷えていくのが分かるような。じくじくと嫌な感じに痛む。



だけど、この感覚は秀真が「断ってきた」と言って戻ってくると静かに身を潜めることも、私は知ってる。


秀真がそばにいるときは不思議と感じない。

だから、普段は忘れていられる。



そういえば、秀真が告白されていることはあっても誰かと付き合っているという話は聞かない。


毎回結果を報告してくるわけではないのだけど、特定の誰かの告白を受け入れていれば、やっぱりずっと一緒にいるのは難しいだろう。


そう考えれば多分、ない。


秀真は誰の告白も受けない。


誰かと付き合うこともない。



今は、まだ。


どちらにせよ、きっとこの痛みは時間が解決してくれる。


いつかは変わっていくから。


今はそれが少しだけ怖い、と無理やり納得することにしている。