図書室に入ると、やわらかい暖かさが私を包んだ。


廊下や教室に比べて段違いに暖かく、かじかんだ指先は少ししびれる。


私は本棚の隙間に入り、背表紙に目を滑らせた。





秀真がこうして女子に呼び出されることはもともとよくあった。


誰にでも優しい秀真は、基本的に男女ともに人気があったから。


幼馴染である私といることが一番多かったのは確かだけど、それでも人見知りをする私よりはずっと交友関係は広い。



背は高く、勉強も運動も出来て、おまけに整った顔立ち。


あの青みがかった髪は女である私よりずっとさらさらと指通しが良くて、羨ましい。


いや、もう、切実に。


私のこの赤毛は癖はつきやすいし、一定の長さになるとはねるし、毎朝困る。


ちなみに髪の長さは、短くしすぎてもはねるし、長すぎても手入れが大変だから、というなんとも女子力の欠けた思考から今は肩より少し下くらい。



秀真の顔立ちは、細部まで綺麗に整っている。


垂れた目じりは笑うと優しげに見える。あと肌、きれい。



そんな秀真を、恋というものに興味を持ち出す年頃の女子たちが、放っておくはずがない。


事実、中学に入ってから呼び出される回数じゃ目に見えて増えている。


さっきのように友人に呼んでもらう子もいれば、手紙を下駄箱に入れたり、私を呼び出して手紙を渡してくれと頼む子もいた。


本当に人それぞれで、様々な告白を見てきたなあと、私はぼんやりと思い出してみる。