「ただいまぁ」
誰が居るわけでもない、玄関に声をかける。
家に着いたのは既に7時を回っていた。
誰も居ない家の中は少し冷たくて、私はそれをすこしでも和らげるためにリビングの電気を真っ先につける。
電気はそのままにし、二階へあがる。
私の部屋は一番の奥の南向きにある。
部屋に行くには両親の部屋と兄の部屋があるのだけど、やっぱりまだ帰ってきてなかった。
両親は今日は多分、帰ってこない。
昨日の朝、今受け持っている仕事が忙しいようなことを言っていたから。
今21歳の兄・想詩くんが高校生だった頃は、想詩くんが夕食までには帰ってきてくれたけど、今はもう忙しいから、私は大体一人で夕食を済ませてしまう。
慣れたもの、だ。
私は部屋に入ると、制服を着替えることもせずベッドに倒れこんだ。
ぼふっと一度体を押し返され、沈みこむ感覚に身を任せる。
電気もつけなかったので、目をつぶらなくとも視界は真っ暗だ。
頭の中の、整理をしたかった。
