チャイムの音が消えてすぐ、口を開いたのは彼女のほうだった。
「赤櫟さんは、秀真君と付き合ってるの……?」
「へ?」
思いのほか、抜けた声が出た。
私と秀真が……?
いや、ない。ないない。
「えっと……どうして?」
私は混乱する頭を落ち着かせるように、とりあえず当たり障りのないことをたずねた。
驚いているのはわたしだけじゃなくて、彼女もきょとんとしている。
彼女の中に何か、確信のようなものがあったのだろうか。
「あたし、さっき秀真君に告白したんだけど」
うん、それは知ってる。
私も二人を見送ってから図書室に行ったから。
「まあ、振られちゃったんだけどね」
えへへ、と困ったように、悲しそうに彼女は笑った。
「そのとき、秀真君が何で誰とも付き合わないのか、聞いたんだ」
「……うん、」
ふと、耳の奥に秀真の声がよみがえった。
『なんか、ちがうんだ』
秀真は私に、そう言っていた。
何かと比べて、違う。
その何か、が分からなくて
聞きたくなくて
私は逃げた。
