「今日は結局なんだったの?」



たまたま話が途切れ、これといった話題もなかったので、私は深い意味もなく尋ねた。



「んー、なんていうか」


「……?」



珍しく歯切れが悪い。


秀真は、言いにくそうに私をちらりと見やる。


今までにも何度かこういう風に話を振ったことはあったと思うのだが、この反応は初めてだった。


普段はズバッと言って話題転換するのが秀真だから、なんとなく違和感がある。


ただ、本当に言いにくそうな表情をするものだから、見かねた私は話題を変える。




「じゃあさ、秀真は何で誰とも付き合わないの?」


「え? あー、んー……どういえばいいんだろ」



重ねた質問にも秀真は暫し悩む仕草を見せた。


先の質問とは違って、この質問は今まで一度もしたことのないものだから、秀真も途惑ったのだと思う。


別に聞きたくなかったわけじゃない。


聞く機会がなかった、それが今出来そうだったからした。


そのくらい軽いつもりだった。


そう、つもりだった。

秀真が思った以上に真剣に悩んでくれるものだから、私もなぜだか緊張してしまう。


ぶつぶつと独り言で考えをまとめるような、言葉を捜すような秀真の声に耳を澄ませたくなる。


本人の答えは出ているようだ。


それをどう伝えたら良いか分からないだけで。



秀真は更に数秒悩んでから、まだ納得はしていなそうだけれど、歌乃の方を見た。

苦々しい顔をして、秀真はたどたどしく言った。

「なんか、違うんだ」