「なんか、モデルルームみてー…」
紗英が渡したタオルで髪を拭きながら、山下は部屋を見渡している
「…あんまり生活感ないでしょ?」
キッチンから山下が飲みたいと言ったハチミツレモンを持って、紗英は隣に腰を下ろした
「おっ!ありがと。てか紗英って何人家族?」
「お母さんと二人。お父さんはずいぶん前に交通事故で…」
「そっか…。」
それだけ言うと、夏生は紗英の頭をよしよしと撫でた
「え……」
驚く紗英を他所に、隣の山下は熱いハチミツレモンと格闘し始めた
この事を言うと絶対に“大変だったね”とか、“聞いちゃってごめん”などと言われ続けてきた紗英にとって、山下の反応は予想外だったのだ

