実はあの日から山下は、部活の休憩中に紗英のいる教室まで来るようになっていたのだった
特に何をするでもなく、今日あった出来事なんかを山下が面白おかしく話すだけだったが、紗英にとっては楽しい時間であった
ーーー
そろそろかな……
時計を見て、紗英はペンを置いて天井を眺めてボーッとする
そして少しすると、いつものユニフォーム姿とは違って制服に身を包んだ夏生が、教室の扉を開けた
「紗英っ!今日もう雨降るから終わったんだ!一緒に帰ろっ!」
また呼んでる……
「あのさ、紗英って呼ぶのやめてって言ってるじゃん。他の人に聞かれたらめんどくさいの」
「えー。もう俺の中で紗英は紗英であって、新田ってイメージじゃないんだけどなー」
「女子はそういうのにうるさいの。勘違いされたら困るから。」
「…すんませんでしたー。紗英、帰ろっ!」
「今の話聞いてた?」
「聞いてた。でも俺は別に紗英なら勘違いされてもいいから。それにウカウカしてると雨降ってきちゃうぞ?」
何サラッとこいつは…

