【完】白衣とお菓子といたずらと

「しっかり目を合わせたり、あれは私の存在を思い出して欲しかったんですよ。そして、どうやってお近づきになろうかと考えていたときに、山下さんが入院になったんです。担当は、無理やりに勝ち取りました。本当は、若い男性患者さんを、女性スタッフが対応する事少ないんですよ。そこからは、山下さんも知ってると思いますけど、山下さんの所に通いつめてみたりと、あんまり言いたくないことも色々ですね」


……俺が、ドキリとしたり、そんな彼女の行動は俺へのアプローチだったのか。


彼女の説明で、先ほどの捕まってしまうの意味が分かってきた。


俺は彼女の仕掛けていた罠に、じわじわと嵌っていっていたのか。


そんなことしなくても、担当になるだけで、少し距離が近づくだけで十分だったと俺は思うけどな。


どのみち彼女の事を好きになっていたと俺は思う。


「……引いちゃいました?」


何も言わない俺に不安を覚えたのか、困ったような、不安そうな顔をして、俺の顔を覗き込んできた。


引くどころか、一生懸命で、

「それだけ想っていてくれたって事なんでしょ?俺は嬉しいよ。小川さんの思惑通り、こんなに惚れちゃったんだから。俺の彼女になってくれる?」


俺はそんな彼女が愛おしいとさえ思った。


彼女の行動があったからこそ、こうやって自分の気持ちをちゃんと伝えることが出来ているんだ。


そうじゃなければ、勘違いして、諦めていたはずだ。


「……」


今度は小川さんが黙る番。涙を浮かべたと思ったら、一気に溢れ出してしまった。


そして、無言のまま何度も何度も大きく頷いていた。


そんなに大きく頷いたら頭が取れちゃうよってくらいに大きく。


その様子が可笑しくて、そして可愛かった。