「違うんですか!?」


俺の反応で、俺が言いたい答えが分かったらしく、けれど納得いかないみたいだ。「つまんねー」と聞こえた気がしたのは、なかったことにしよう、うん。


「付き合ってはないから。……なんで、そんな事になったんだ？」


本気で信じていたらしい池田は、拗ねたように唇を尖らせている。いやいや、お前がそれやっても可愛くないからな。気持ち悪いから。


「だって、昨日の夕方、スキップしそうな程上機嫌の小川が珍しく愛想振りまいて、残業していたスタッフにお菓子を配って廻っていたから。あんなに笑顔の小川を初めて見ましたよ。ハッピーハロウィンとか言いながら、どこで買ってきたのか、かぼちゃの絵が描かれた棒つきキャンディを、それはもう大量に。絶対何かあったと思ったのに」


小川さんの様子を思い出しているのだろう。すごく不思議そうな顔をしながら話をしてくれた。


夕方って、ここに来たあとだよな？そんなことを彼女はしていたのか。


絶対、その時の小川さん可愛かっただろうな、とか考えている俺は相当彼女に嵌ってるってことだよな。


それにしても、愛想を振りまいてなんて……なんか妬けるな。俺のものじゃないって分かっているけど。妬けるもんは妬ける。