小川さんが休みな事を理解したのは伝わったらしく彼女は、俺に背を向けて出て行こうとした。


あーあ、帰ってしまう。


そう思ったのに、なかなか小川さんは扉を開けようとしない。


不思議に思うも、声をかけることは出来ず、ただじっと彼女の行動を見つめていると、満面の笑みで彼女は振り向いた。


「もう1つ忘れていました」


そう言って、ニッコリと天使のように微笑んだ。








「トリック・オア・トリート」







……え?


突然の言葉に、一瞬理解が出来なかった。


そうか、ハロウィンか。


お菓子は……今日は何もなかったはずだ。


「ごめん、今日は何もないんだよ」


何も渡せる物がない事が申し訳なくて、謝りながら伝えた。


残念がるかと思いきや、彼女の顔を見ると、何やら嬉しそうに笑っている。


そして、ツカツカと俺の傍へと近づいてきた。


どんどん縮まる距離に、焦ってしまう。けれど、ここは病室のベッドの上。


逃げる場所もなく、これ以上俺が動く事は出来ない。