【完】白衣とお菓子といたずらと

平行棒へと移動すると、つま先を床に軽く触れる状態での歩行練習をした。


そのまま松葉杖に持ち替えて、同じように床に触れるだけで、リハ室の中を行ったり来たり。


繰り返しているうちに、なんとなく慣れてきた。


それどころか、完全に左足を浮かせていたときと比べると、バランスも取りやすくて、何より腕がすごく楽になった。


それを小川さんに伝えると、今日から移動は全て松葉杖だと言われた。


……少し不安だ。


「よし、今日はこれ位で終わりましょうか」


「すごく疲れたよ。今日もありがとう」


お世話になったことへの俺を告げて、俺は松葉杖のまま病室へ帰ろうと歩き始め……ようとした。


いきなり屈み込んだ小川さんによって阻止されたけど。


「え?どうしたの?」


俺の疑問は無視して、無言で俺の足首に触れた。




――ビクっ

急な行動に、体が反応してしまった。そりゃ、いきなりは誰でも驚くよ。


無言のまま立ち上がった彼女の顔を見ると、何か考え事をしているのか、ブツブツと俺に居は聞き取れないような声で何か呟いている。


そして、あっと表情が明るくなったと思ったら、俺を見上げてニッコリと笑った。


……あっ、今の良い。


リハビリ中だし、不謹慎だと分かってはいるけれど、彼女の笑顔と上目遣いにドキリと心臓が跳ねた。