―――カチ、カチ


松葉杖の下のほうに付いているポッチ部分を押して、長さを調節したと思ったら、俺の持てというように差し出してきた。


「当ててみてください」


え?いきなり?

どうやってとか説明がなかったと思ったら、強制的に俺の腕の下へと松葉杖を入れてきた。


こんな風かな?そう思って、言われるがままにグリップ部分に手をかけた。


「うん、よし。あー、よさそうですね」


俺の格好を少し後ずさりながら確認するとそう言った。


そして、急に腕を伸ばし、俺の脇の下と松葉杖の間に手を入れてきた。


突然の行動に驚き、ビクッと反応してしまった。


「……何?」


小川さんの行動の意味が分からず、尋ねる事にした。


「すみません。松葉杖は脇で支えてはいけないんですよ。だから、指3、4本分間を空けないといけなくて、その確認です。声かけを忘れてました」


俺の反応がなにやら面白かったらしく、笑いながら説明してくれた。


心臓に悪いから、そういうのは事前に説明してほしい。こんな事をこちらから言ってしまえば、意識しているのがバレてしまうから、俺からは言えないけど。