【完】白衣とお菓子といたずらと

「身長はー?」


了承したのか、池田が尋ねていた。


「180cm」


きっと松葉杖の調整に必要なんだろうということは、さすがに俺でも分かった。


だから、小川さんの代わりに俺が答えた。


池田と香坂が、備品庫の方へと駆けていくのが、鏡越しに見えた。


きっと松葉杖を取りに行ってくれたんだろう。






「……山下さんって、身長高いんですね」


「え?今頃?」


立ったままで待機している俺を、棒を挟んですぐ隣に立って見上げた姿勢で彼女が言った。


確かに、リハビリが始まって、こうやって隣に並ぶ事がなかったから、今まで身長差とか全く気にならなかった。


俺の身長が高いって言うけどさ、小川さんも女性では十分大きい方だと思うけどな。


「こんな風に隣に立つ機会なかったからですね」


そう言って、上目遣いのままニッコリと笑った。


「小川さんも小さくはないでしょ?」


「そうですね、うちの女性リハスタッフでは1番大きいですね。165cmありますから」


165か……俺との身長差は15cmか。うん、ちょうどいい。





――って、何がちょうどいいんだよ。


広がっていきそうになった妄想を慌てて消した。