【完】白衣とお菓子といたずらと

ベッド上での運動が終わったと思ったら、次は起きるように促された。


車椅子へと移乗して、リハ室の中央付近にある平行棒へと誘導された。正確には平行台というらしいけど、そんな細かい名称は俺にはどうでもよかった。


「早速免荷での歩行練習に移りますね。じゃあ、まずは立ってください」


立つように促され、目の前の棒を掴み立ち上がった。左足が床に付かないように、細心の注意を払って。


けれど、思っていた以上に彼女はうるさかった。


「あー、手の力で立たないで下さい。今、平行棒引き寄せましたよね?立つときは車椅子の前方に座って、お辞儀するくらいのつもりで身体を曲げながら右足にしっかりと力を入れて立って下さい」




……やり直しをさせられてしまった。


リハ室の端の方から、俺と小川さんのやり取りを見てクスクスと笑っている奴らが3人ほど居たが、気づかないふりに徹した。


「そう、そう、そんな感じです。次は、両腕でしっかりと身体を支えながら、棒の中を歩いてみましょうか。絶対に左足は着けないで下さいね」


免荷での歩行というものはなんとなく予想がついたため、特に見本を見せられなくても何とかできた。


ただ、体重の殆どを腕で支えるからか、腕が辛い。


「あー、やっぱり松葉杖いけそう。先輩方―!松葉杖持って来て下さい」


ぶつぶつと独り言を呟いたと思ったら、香坂たちの方を振り向き……パシリにしていた。


先輩を顎で使うなんて、すごいな。