【完】白衣とお菓子といたずらと

「さて、ここからは自分で動かしてもらいますから」


終わりだと言わんばかりに、俺の脚をベッドに下ろしながら彼女が言う。


固定が取れたばかりで、固定されている安心感がなくなり、少しでも動かす事に身構えてしまう俺の脚を、しっかりと支えそっとベッドに置いた。


「え?自分で動かすって?」


いきなりの事に焦ってしまう。動かすって、どうやって?


「ちゃんと誘導はしますから。まだ他動での関節運動はダメなんですよ。だから、自動運動をやってもらいます。まずは寝たまま両脚ピンと伸ばしてください。

……っあ、ちゃんとつま先は天井の方に向けて、横に倒れないようにしてください」


彼女の細かい指示に従って、言われるがままの姿勢になった。


「そのまま、両方のつま先を自分の身体に近づけるようにして足首を動かします。たぶん、まだ左はほとんど動かないと思いますけど」


……っく。ぐっと力を入れてみても、本当に左の足はピクピクと動く程度で、動きという動きは見られない。


そして、

「……ぃ……痛って」


無理に動かそうとして、鋭い痛みが走った。


「あー、痛みが出るか出ないか位でいいですよ。繰り返していると、少しずつ動きが出てくると思いますし。左もですけど、右にもしっかり力入れてくださいね。そうしたほうが看側の動きが出易いので」


特に彼女が何かするわけでもないが、俺が寝ている治療ベッドの脇に立ち、細かく指示を入れてくる。


またその指示が的確で、俺の様子をちゃんと見てくれている事が分かる。