【完】白衣とお菓子といたずらと

足趾の関節を動かした後、足背、足底からふくらはぎ辺りを、指先から身体に向けて、擦るように撫でていった。


「それは何してるの?」


彼女のしている事が分からず、すぐに聞いてしまった。


「浮腫みというか腫脹があるので、軽く流している感じです。それに、固定中全く足関節動かしていないので、皮膚の伸張性を出すために、皮膚だけ伸ばしてるんですよ」


そう言って、今度はほんの少しだけ触れて、左右にじんわりと動かし始めた。


こういうのって見ているだけじゃ何しているか分からないよな。


やってもらって、微妙な動かし方の違いとかをやっと感じれる程度だし。


「リハってさ単にマッサージかと思ってた」


こうやって関わる前は、分からずにそう思ってしまっていた。


つい口にしてしまうと、小川さんは分かりやすくムッとした顔をした。


言ってはいけない言葉だったらしい。





「リハビリはマッサージ屋じゃないですよ。あんまりリハビリスタッフにそれ言わないで下さいね。リハビリをマッサージって言われるの嫌いな人がリハには多いので。1つの手法としてマッサージを使うことはあっても、それだけなんてありえないですから」


うん、確実に言ってはいけなかったらしい。


淡々と説明している彼女に、しまったと感じた。


「ごめん、ごめん。でもさ、今はちゃんと違うって分かるよ」


分かってるという言葉に、それならと納得してくれたようだった。


プロ意識があるからこその地雷らしい。


うん、覚えた。もう絶対に言わない。