【完】白衣とお菓子といたずらと

「さて、リハビリ始めていきますか」


忘れていたけど、今からなんだよな。


承諾を得る言葉ではなくて、ただ宣言したようなものらしく、俺が答える前に彼女はリハビリするための姿勢を作っていた。


仰向けに寝た俺の左下肢を少し上に挙げベッドとの間に隙間を作ると、左だけ正座したような姿勢の足をその隙間に入れた。


俺の脚は小川さんの太ももの上辺りに乗っているような姿勢になった。


きつくないのか?と一度聞いたことがあるが、この姿勢が関節を1番動かしやすいらしい。


毎日の事だから、俺は随分慣れてしまった。


接する場所が少しでも変わると、まだ緊張するけど。


「足の指は私が動かしていきますね。まだ足首は自動運動だけなので、私は動かしませんけど」


先ほどまでとは全く違う空気を纏った小川さんは、早速俺の足趾に手をかけていた。


完全に仕事モードに切り替わっている。


このオンオフがはっきりしている点も、怪我をした事で知った彼女の一面。