【完】白衣とお菓子といたずらと

さっきの話題は無かったといわんばかりに、小川さんはパクパクとお菓子を平らげていく。


俺は夕食がもうすぐだからという理由で一緒には食べなかったけど、彼女がおいしそうに食べる様子をずっと眺めていた。


「私、本当糖分ないとダメなんですよ」


そう健気に笑っていた。


香坂が持って来たお菓子をあげるなんて、酷な事をしたんだろうか?


自分のした行動はダメだったんじゃないかと不安になる。


小川さんがここに訪れてくれるまでは、あんなにドキドキとして、楽しみにまでしていたというのに。


やっと惹かれる女性が現れたと思ったらこれだ。


俺って本当になかなか格好良くは決まらないよな。


「……どうしました?やっぱりこんな時間に来ちゃって、迷惑でした?」


考え込んでいたせいか、彼女の話を上の空で聴いていた事が気づかれていたようだ。


悲しそうに彼女が尋ねた。


俺が悪いだけなのに、迷惑だなんて、そんなことありえないのにな。


「ごめん、考え事しちゃっててさ。来てくれて俺は助かったよ。ありがとう」


君が来てくれて、素直に嬉しかった。


それに、

「小川さんってそんな顔するんだな、とか今まで知らなかった小川さんを知ることが出来て、俺は嬉しかったよ」


これも俺の本心。


どこか壁を作ったような小川さんが、初めて自分を見せてくれたような気がした。


俺には付け入る隙もないって気づかされたのに、彼女にどんどん惹かれていく自分にも気づかされた。