美沙の様子を気にしながらも、とりあえずテレビをつけて、ソファに腰を降ろした。


キッチンからはトントントンと規則的なリズムで軽快な事が聞こえてくる。普段はこんなリラックスした状態でこの音を聞くことがないせいか、凄く不思議な感じがした。


そして、なぜかすごく心地良い。はっきりと聞こえていたはずの音が、どんどん遠くなっていく。


あー、やばい。眠くなってきた。


眠ってはいけないと頭では分かっているけれど、不思議と心地よい空間と、程よい疲労感が俺に睡魔への抵抗を許してくれない。


折角、美沙が俺のために料理を作ってくれているというのに。彼女の姿を目に留めておきたいのに。


――もう、限界だ。


俺の意識はパタリと途絶え、夢の世界へと誘われていく。抗う事は出来そうになかった。