――ピンポーン


「はい、今開けるね」


思っていたよりも、彼女の到着が早かった。


鍵を解除して、玄関を開けると両手に荷物を抱えた美沙が立っていた。


外が寒かったのか、顔をマフラーに埋めて、鼻は少し赤くなっている。


「いらっしゃい。駐車場わかった?」


「うん、細かく聞いてたから大丈夫だった」


車で通勤している彼女は、今日は車でここに来ると言っていた。たまたま俺の借りているアパートが、駐車場が2台分家賃に含まれていて、一台分は余っていたから、そこに停めてもらった。


「そっか。さ、外寒かったでしょ。中に入って」


荷物を彼女の腕から奪おうとすると、少し抵抗されたけど、諦めてくれたようで、促されるまま部屋の中に足を進めてくれた。


「あー、暖かい」


マフラーを外しながら、彼女がしみじみと言った。相当、寒かったんだろうな。ここ2,3日で、急に冷え込んできたからな。


「何か、温かいもの飲む?」


彼女から受け取った買い物袋をキッチンに上げながら彼女に聞いた。


俺の問いかけに、彼女は首を横に振った。


「今はまだいい。それより、礼央さんお腹空いたでしょ?急いでご飯作るね」


そう言って、袋の中をガサガサと漁り、完全に料理モードのスイッチが入った。


しばらくは俺の仕事は何もなさそうだな。


彼女の到着での浮かれた気分に浸り暇も与えられなかった俺は、大人しく待つことにした。


今日はまだまだこれからなんだから。