「――ちょっと、礼央、何ボーっとしてるのよ」


「あー、ごめん、ごめん。もう喧嘩は終わった?」


姉ちゃんに呼ばれて、慌てて2人の方を見ると、不思議そうな顔で見つめている晃さんと目が合った。


右手で頭を掻きながらハハと曖昧に笑って誤魔化した。


「喧嘩なんて……そんなのしてないから」


「そうですね」


「ほら、礼央君も疲れてるだろうし、休ませてあげよう。ほら、俺達は帰るよ」


不機嫌になりそうな姉ちゃんに、しまったと思ったけれど、晃さんがナイスアシストで助けてくれた。


「そうね、帰りましょうか。じゃあね、礼央。美沙ちゃんにもよろしくね」


「はいはい、分かったよ。気をつけて帰れよ。晃さんも、また」


「あぁ、またね。今度はゆっくりうちにおいでよ。彼女と2人で」


じゃあね、と姉ちゃんと晃さんは手を振りながら帰っていった。


階下までの見送りはいらないといわれ、玄関で2人を見送った。


扉が閉まったのを確認し鍵をかけ、そして、くるりと向きを変え、室内へと足を進めた。




――さてと、まずは


「荷物を整理しますか」


キッチンの傍に積み上げられている、入院中に使っていた物と、今日買い物してきたものを見て、ついついため息が漏れた。


1人だと、時間がかかりそうだ。ここまで姉ちゃん達に手伝ってもらえばよかった。姉夫婦をさっさと帰してしまった事を、ここで初めて後悔した。