「患者さんにはニコニコ可愛く笑ってるのに、俺らにも壁を作って誰も寄せ付けませんからね」


「いや、あれはお前が嫌われているだけだろう」


香坂の言葉を池田が即座に否定した。


「マジで?」


聞き返す香坂に、他2人は大きく頷いていた。


「小川さんに嫌われてるのか?」


「そんな事ないと思いますよ。俺、高校時代から知り合いなんですけど、昔から俺のすること言うことを、バッサリともう見事に斬ってましたね。あー、あの冷え切った視線を思い出したら、寒気がした」


そう言って、自分を抱きしめるような格好をし、ぶるぶると震えるマネをしていた。


嫌われるほどの事を、知らずにこいつならやったんだろうなと、なんとなく想像できた。


「と・に・か・く、山下さんは間違っても惚れちゃダメですから。あいつに惚れても、バッサリ斬られてTHE ENDです」


力強く言う香坂に、俺は曖昧に笑って返した。


惚れるなって言われてもな……


忠告ありがとう、けれど、手遅れかもしれない。











3人は病室で周りに迷惑にならない程度にひとしきり騒いで、帰っていってしまった。


急に静かになってしまった病室で、これから始まるリハビリと今日聞かされた事を1人考えた。


小川さんか……


まさか、こんな接点が出来るとは思っていなかった。