「……ありがとう、今の嬉しかった」


隣にいる美沙の頭を撫でながら、お礼を言った。感謝の気持ちを伝えたくて仕方なくなったからだ。


そんな俺の行動に、美沙は照れたのか、俯いてしまった。


俺から緩んだ口元が見えていることにはきっと気づいていないんだろうな。


こういった表情は、付き合うようになってから初めて見せてくれるようになった。付き合う前、随分と壁がなくなってきていたように感じていたけど、まだまだだったらしく、こうやって少しずつ内側へと入れてくれる事に俺は喜びを感じている。


「じゃあさ、こうしない?美沙が俺の家にいつでも来れるようにしておくからさ、仕事終わりでも週末でも来たいときに来れば良い。というか、俺はいつでも来て欲しい」


「……いいの?」


「もちろんだよ。早速、明日来てくれたら嬉しいんだけど、どうかな?」


どんな反応が返ってくるか不安で、恐る恐る彼女の顔を見つめた。断られたらどうしようか。


なんだ。不安なんて感じる必要なかったな。


俯いていた顔をあげて、すごく嬉しそうに笑って、そして何度も何度も頷いている。


抱きしめたい衝動に駆られたけれど、伸ばしかけた腕を慌てて引っ込めた。ここは病院で、職場だ。いくら2人きりといっても、さすがにな。


今更かもしれないけれど、これからも働いていく予定の職場では、わきまえないといけないよな。


あー、早く退院したい。そうしたら、すぐにでも彼女に触れることができるのに。